Ⅰ はじめに
1989年、労働界の官民が団結し、「平和 幸せ 道ひらく」をスローガンに掲げて結成された連合は、第17回定期大会(2019年10月)で意義深い30周年をむかえた。そして、2019年12月には連合大阪も結成30周年を迎えた。この間の運動では、連合として2035年の社会を見据え、めざすべき社会像の「働くことを軸とする安心社会」を深化させた「-まもる・つなぐ・創り出す-」の連合ビジョンを示し、その実現にむけて「働くこと」につなげる「5つの安心の橋」の構築に力を尽くしてきた。
連合は外部有識者による「連合評価委員会」から「労働の価値の再確認、社会的不条理に対する異議申立て、自分より弱い立場にある人との共闘、職場や地域で働く労働者の頼りになる存在となること」等の提言を受けて、2005年10月に「地方連合会・地域協議会改革の具体的実施計画」を決定し、全国260地域協議会の体制整備を行った。連合大阪もその方針を受けて、2005年に従来の地域協議会の組織体制の見直しを行った。大阪南地域協議会は、連合大阪のモデル地協の一つとして、活動領域の整備を行い、連合の地域における運動の質・量ともに強化を図ってきた。
一方で3年以上に及ぶ新型コロナウイルス感染症は、収束には至らないものの、感染症法上の位置づけが変更され「ポストコロナ」に向けた動きが加速している。
私たち労働組合は、働く者・生活者の代表者であると同時に、社会を構成するステークホルダーであり、労働運動は、ポストコロナの社会づくりに多大な影響を与えなければならない。労働組合の根源的な使命である「『一人・ひとりの働く者とその家族』の命とくらしを守ること」を果たすためにも、運動の社会性を向上させるとともに、運動主体の組織力を高めなければならない。
これまで大阪南地域協は、人と人が直接つながり、「絆」を繋ぐ運動を目指し展開してきた。しかし、コロナ禍によって、人と人、人と組織のつながりが難しくなり、様々な制約の下での活動を余儀なくされてきた。
このような状況のなか、オンライン会議を活用するなど機関会議の開催に努力し活動を維持しながら、更なる質の向上に力点を置いて取り組みを展開してきた。その結果、各小委員会で企画する取り組みにおいても実行委員会形式を立ち上げ、より組合員目線での企画・運営を目指すなど、目的意識は高まってきた。
今後の取り組みにおいては、「ポストコロナ」に応じた新たな運動のスタイル・様式の構築として行ってきた基盤を活用し、幹事会をはじめ、各種会議体のリアル開催を基本としながら、オンライン会議(参加)の活用を継続し、丁寧な合意形成のあり方について取り組みを進め、連帯感のある連合運動につなげていく。
政治課題では、2012 年の民主党政権崩壊以来、数の力を背景とした政権運営が、深刻な政治不信を招いている。大阪でも、有権者の選択肢が限定されるかのような動きが加速し、二元代表制の持つチェック機能の弱体化への懸念も強まっている。労働運動にとって「力と政策」はまさに生命線である。持続可能で包摂的な社会を実現するためにも、労働組合が、先頭に立ち、国民に信頼される選択肢を示さなければならない。
国の基本政策について、岸田内閣は2022年末に「安全保障3文書」を閣議決定し、「反撃能力」保有の明記、2027年度における防衛費のGDP比2%への増額などを掲げた。しかし、その後の国会審議でも、防衛力強化の必要性・妥当性に関する議論は尽くされたとはいえず、財源確保の具体案も先送りされるなど、政府の説明責任が問われている。
大阪の政治情勢は、第20回統一地方選挙で府議会・大阪市会で大阪維新の会が単独過半数を確保し、知事選・大阪市長選・堺市長選でも維新候補が勝利し、一強政治が続いている。また、大阪府域の首長が20市町村となり、二元代表制がもつチェック機能すら危うい状況となっている。これらは大阪府議会で議論せずに首長が決定する専決処分の多発化に表れている。また、大阪・関西万博へのパビリオン建設の遅れや高校授業料の無償化などの課題を抱えているが、大阪市会の定数削減など数の力で押し切り、「身を切る改革イメージ」を増幅させ、有権者に関心の高い「子育て・教育」施策への重点予算で支持を固めようとしている。
第50回衆議院選挙にむけては、大阪選挙区における連合推薦候補者は現在立憲民主党から3人にとどまり、必然的に空白区対策が求められる。また、維新は、公明党との選挙協力を白紙にした府域4選挙区(3.5.6.16区)への候補者の擁立を決定し激しい選挙戦が想定される。
大阪南地域では、統一地方選において、地域・地区そして構成産別組合員の懸命な取り組みにより現職推薦議員の再選は果たせたが、田代岬町長が唯一の推薦首長となり、方針にも掲げてきた地方議員の増には、充分な成果を上げる事ができなかった。推薦議員・候補者との日常的な連携を強化し、連合として政治に取り組む意義を再徹底しなければならない。
このように社会が大きく変わる分岐点をむかえ、働き方・暮らし・社会の新しいカタチ(ニューノーマル)を模索し、連合の改革パッケージと連動させながら、取り組みの強化をはかっていく。さらに連合大阪組織運営PTや30周年記念事業からの提言である「子どもの貧困の解消」に向けて地域活動を活性化し、「持続可能性」、「包摂」、「多様性」を基底に、連合ビジョン「働くことを軸とする安心社会-まもる・つなぐ・創り出す」の実現にむけ、地域からの原動力の先頭に立っていく。
〈 連合(連合大阪)のめざすべき社会像 〉
連合がめざす社会は、働くことに最も需要な価値を置き、誰もが公正な労働条件のもと、多様な働き方を通じて社会に参加でき、社会的・経済的に自立することを軸として、それを相互に支え合い、自己実現に挑戦できるセーフティネットが組み込まれている活力あふれる参加型社会である。
加えて、「持続可能性」と「包摂」を基底に置き、年齢や性、国籍の違い、障がいの有無などにかかわらず多様性を受け入れ、互いに認め支え合い、誰一人取り残されることのない社会をめざす。その実現に向けて、「働くこと」につながる5つの安心の橋を整備していくことが求められている。
〈 大阪南地域協議会に求められている機能 〉
2005年以降、地域協議会の活動は、最低実施基準(第1ステップ)として①政策提言機能、②政治活動機能、③生活相談機能、④組織拡大機能、⑤交渉機能、⑥中小労組支援機能、⑦中小・地場企業支援機能と、第2段階基準(第2ステップ)として⑧専門家やNPO・ボランティア団体とのネットワーク機能、⑨共済機能、⑩退職者の拠り所機能、⑪働く人のまちづくり機能、⑫就労支援機能の「12の機能」を段階的に取り組むよう求められてきた。
その後、2019年に連合本部の「連合運動強化特別委員会」の検討内容にもとづき、これまでの「12の機能」を見直し、「2つのコア活動」と「各地域の特色を活かした活動」に再構成されることとなった。
Ⅱ 具体的な活動
1.連合組織内の連携を強化するための活動
(1)機関運営(幹事会等)の充実と活性化
①総会・地域委員会で決定した方針に基づき、具体的活動の議論・決定の機関会議として幹事会を定例開催する(毎月開催)
②活動根幹に関する案件について事前の意見収集の場として、三役会議を開催する
③地域・地区協議会の連携強化と地区協議会の高位平準化のために、地域・地区事務局会議を隔月で開催する
④これまで継続してきた小委員会については引き続き取り組みを継続するが、小委員会活動の更なる深化を求めて、継続的に取り組みの見直しを行い、取り組むべき課題に応じて、実行委員会の設置や小委員会の追加・削除を含めて検討する
⑤コロナ禍で構築したオンライン会議体制を活用し引き続き「ポストコロナ」に対応した機関会議・セミナー・諸行事の運営を行う
⑥連合大阪ジェンダー平等推進計画の取り組みに応じた地域・地区協議会での活動を推進する
⑦地域協議会のホームページの運用充実と役員間の状況共有を促進する
⑧地域・地区きずなの会との連携を強化する
(2)単組役員・組合員の地協活動への参加機会の創出
①各種セミナー、諸行事などを開催し、地域全体としての連合活動を強化する
②大阪地方メーデーの開催要領に基づき、地域の特性を活かした地区メーデーを開催する
③地域一斉環境活動として、3地区協議会でのクリーンキャンペーンを継続実施する
また、街頭行動と同時に周辺の地域清掃も実施する
④社会貢献活動として連合大阪大阪南地域協議会、大阪南地域労働者福祉協議会、近畿労働金庫、こくみん共済coop<全労済>の協賛する4団体と地域の絆として「ベルマーク運動」を継続推進する
⑤「使用済み切手の収集」に引き続き取り組む。
⑥新たな社会貢献の取り組みとして連合大阪と連携し、「子供の貧困の解消」に向けた活動を実施していく。具体的には第一歩として地域・地区でフードドライブに取り組み子ども食堂の支援を行う。
⑦連合平和行動へ積極的に参画する
2.地域で働くすべての働く仲間を支えるための活動
(1)政策提言・政策実現に向けた取り組み
①大阪南9市4町における広域的な連携を強化するため、連合大阪の要請事項をベースに、大阪南地域協議会として独自要請項目の策定を実施する
②「首長との政策懇談会」を継続開催し、9市4町における連合の存在意義を高める
③それぞれの自治体における課題の解決を図るべく、地区協議会・フォーラム議員と連携をとり独自要請事項の策定に努力する
④自治体への政策・制度予算要請する各項目について、連合推薦議員と事前協議し、各議員の議会における発言につなげる
⑤自治体への政策・予算要請は、首長および幹部との懇談を基本として推進する
⑥大阪南政策・政治フォーラムの機能を強化し、各地域活動への参画を要請し推薦議員・候補者との日常的な連携強化に努める
⑦各級選挙ですべての推薦候補者の必勝にむけて取り組む
(2)組織拡大に向けた情報収集と組織内外との連携
①連合大阪、産別と連携を強化し、未加盟組織への働きかけを強化する
②関係団体(労福協など)との連携による情報収集を行う
③商工会議所、商工会、地元企業への情報提供活動を行う(堺経営者協会と連携する「堺地域労使会議」等)
④地域内未組織企業に関する情報を連合大阪へ提供する
⑤自治体の審議会等への積極的な参画による経営者との関係構築に努める(地域労働ネットワーク等)
Ⅲ 組織運営
1.毎月1回、幹事会を開催する。基本的に、連合大阪執行委員会の翌週に設定し、方針や取り組みを遅滞なく展開する。但し、単なる展開に留まらないよう、議論しやすい環境整備に注力し、対面での開催を基本としながらコロナ禍で構築したオンライン会議体制も活用し丁寧な合意形成に努める。
2.幹事会の前段で、三役会を開催する。重要案件について事前の意見交換・調整の場として運営する。
3.隔月で、事務局長会議を開催する。大阪南地域協議会と3地区協議会の連携を強化し、活動の高位平準化を目標として運営する。
4.以下の小委員会について、取り組みを継続する。但し、小委員会活動の更なる深化を求めて、継続的に取り組みの見直しを行う。取り組むべき課題に応じて、実行委員会の設置や小委員会の追加・削除も含めて検討する。
(1)組織強化小委員会
組織強化は非常に重要な課題である。特に、女性の活躍推進については、益々重要度を増している。女性交流会の開催を継続し、企画・運営にあたっては参加者目線で構築するため実行委員会を立ち上げ、実施していく。このような取り組みを重ね将来的には女性委員会の設置を目標として、地域での活動を強化・推進する。
また、組織拡大の取り組みの一歩として、連合大阪組織拡大委員会で結成された組織拡大オルグ会議と連携し、連合未加入・未組織企業等のリスト化を行い、訪問活動を行う。
(2)政策小委員会
「首長との政策懇談会」は、連合大阪南地域協議会として最も重要な取り組みの一つである。実行委員会の運営を進め、政策委員会としても側面的に支援し、取り組みを強化・継続する。
政策・制度予算要請行動は、各自治体への独自要請など取り組みの強化が進んでいる。回答を受け、総括し、次年度につなげる全体管理の推進と、地区協議会との連携強化のため各地区事務局長にオブザーバーとして参画を継続し、今後より一層取り組みを強化・継続する。
(3)社会貢献小委員会
「ベルマーク運動」は定着し、集まる点数も多くなってきている。協賛する4団体と共に、活動の強化・推進に取り組む。
「使用済み切手の収集」に引き続き取り組む。
また、新たな社会貢献の取り組みとして連合大阪と連携し、「子供の貧困の解消」に向けた活動を実施していく。具体的には、第一歩として地域・地区でフードドライブに取り組み子ども食堂の支援を行う。政策・制度予算要請において行う各自治体の「子ども食堂ネットワーク」の実態把握について、結果を総括し地域に根差した寄贈のあり方について検討する。
(4)研修小委員会
「ユニオンセミナー」は、次世代育成として非常に重要な取り組みである。実行委員会での企画・運営を継続し、研修委員会としては側面的に支援し、取り組みを強化・継続する。開催に向けては「ポストコロナ」を見据えた企画・運営を実施していく。
研修委員会としては、引き続きユニオンセミナーの企画・運営に関与しながら、労働運動を担う次世代の育成に向けて、新しい取り組みを検討するなど、活動を強化・推進する。